天比登都柱(あめのひとつばしら) それは夢の島・壱岐
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勝本漁業史 一六、自衛監視

一六、自衛監視

自衛監視
勝本の漁民は、ブリ・タイ・イサキなど釣操業の大半を七里ヶ曾根漁場に依存している。この大事な七里ヶ曾根漁場は、昭和三九年一二月の天生丸事件(唐津魚市場構内に事務所を置く天生水産所属の天生丸旋網(まきあみ)船団が、七里ヶ曾根において旋網操業をし、大量のブリを唐津魚市場に水揚げした。これに対し勝本漁協では役員・総代・ブリ一本釣組合等で陳情団をつくり、天生水産事務所に陳情を行なった)に代表される旋網の操業や、沖建網の密漁船によって荒らされるようになった。
そんな事情で勝本の漁民がこの侵入者達に対して神経をとがらしていたのは当然である。そのために七里ヶ曾根付近に少しでも怪しい船影や、灯火があると旋網が操業しているのではなかろうか、沖建網の密漁船ではないかといった情報が漁協に寄せられた。情報を受けた漁協では、沖世話人やブリ一本釣組合に対し勝漁丸で監視に行くよう要請した。昼間操業より帰り体を休める暇もなく監視に行ってみると、これが全くの誤報であるという場合も珍しくなかった。
そこで監視に行く前に、情報が本当かどうか確かめることはできないものかと相談をした。その結果、若宮島駐在の海上自衛隊のレーダーで調べてもらったらということに話が決まった。七里ヶ曾根付近に果して船がいるのか。またいる場合もその船が航行中の船か、停泊しているのかを確かめてもらおうというのだ。早速漁協から自衛隊にお願いしたところ、夜間の仕事にもかかわらず、気持良く引き受けてもらった。それからは出動の要請を受ける度に若宮のレーダーに調査を依頼し、七里ヶ曾根付近に停船中の船がいる場合だけ監視に行くことにした。
このような状況であったので、七里ヶ曾根を旋網操業の禁止区域にしようと度重なる陳情が続けられた。
昭和四〇年一月
⑴壱岐郡漁協組合長連名で旋網自粛操業を要請(関係官庁)。
⑵県は県知事名により玄海連合海区調整委員長宛漁業調整を依頼。
⑶知事名により水産庁長官あて七里ヶ曾根を大中型旋網漁業から除外するよう要請。
昭和四一年一月二九日
⑴玄海連合海区調整委員会に対し旋網の七里ヶ曾根操業自粛を要請。
⑵旋網業者が自粛を行わない場合は委員会の指示権を発動する。
昭和四一年二月一〇日
⑴水産庁調整課長より七里ヶ曾根周辺における操業の自粛措置を講ずるよう指令の通達。
この様な陳情は、勝本漁民が中心となり、壱岐漁民の名で陳情を行なったのである。
そして昭和四三年六月一一日郡自衛監視委員会が結成された。

監視の方法
壱岐周辺の漁場で一本釣を営む漁船は年々増加し、これに伴い漁場は狭隘となり、一方漁獲は減少しつつある現在、漁民が最も恐れる密漁船、沖建網、ごち網等の違反操業が多く、この密漁船の一本釣漁場への侵入は、壱岐島漁民の生活の場とする漁場を横暴なる乱獲により、漁場は荒廃し漁民の生活さえも奪い取ろうとするものである。
この現状を見る時、漁民の奮起は高まり、一丸となって自主的な監視に当ることに踏み切ったのである。
一、監視の方法としては
⑴監視船は専任監視船として二〇㌧級船を以って監視に従事させる。
⑵監視人は常任監視員として一名専任する。
⑶監視範囲を七里ヶ曾根を中心とした周辺の漁場とする。ただし他漁場においても密漁船の操業ある場合等、必要に応じて監視の任にあたる。
⑷監視の重点を日没時刻より、夜明けまでとする。ただし違反船の漁獲状態においては昼間の監視にも当るものとする。
⑸監視期間は当面の暫定期間として、六月一五日より一〇月三〇日までとして実施する。ただし、将来、永続の予定である。
二、監視の構成として、先ず各漁協が率先し郡監視委員会を創設した。
勝本漁協 一三名 箱崎漁協 二名
郷ノ浦漁協 二名 東部漁協 一名
石田漁協 一名
郡監視委員会
委員長 原田正義
副委員長 大久保健次
委員 村川幸平 香椎二一郎 大久保利吉 吉永明治
豊坂高 下村繁木 松尾憲二 小川唯芳
阿田憲二 吉田博和 斉藤守 増田福市
辻川喜敏 中川博 野村繁芳 東谷豊次郎
(『すなどり』第一五三号)
昭和四三年九月九日
七里ヶ曾根海域を大、中旋網操業禁止海域として、法的措置をしてもらうため陳情打合せ会を開催し九月二四日長崎県庁へ陳情を行う。
陳情団
郷ノ浦平田組合長、野村理事
東部 酒井組合長、勝本 熊本組合長、香椎理事、原田委員長、吉永鰤釣組合会長
箱崎 下条組合長、川添理事、増田委員外二名
県庁において山本武生県議紹介
昭和四三年一一月二八日
玄海連合海区調整委員会陳情
陳情団 壱岐郡連合漁協長会
箱崎 下条岩男、勝本 熊本長太郎、郷ノ浦 平田喜代太郎、東部 酒井松次郎、石田 豊井三一各漁協長
郡監視委員会
勝本漁協理事 香椎二一郎、監事 大久保利吉、総代 原田正義、小川唯芳、鰤釣組合 吉永明治
玄海連合海区調整委員
福岡県筑前海区 鎌田穣
長崎県北部海区 原田熊太郎(勝本)
佐賀県松浦海区 浦丸正視
農林大臣推薦委員二名 計五名
出席者水産庁調整官、玄海連合海区調整事務所長(農林省出張所長)
外三名
各県より県庁職員数名ずつ。
この委員会において第一号議案として七里ヶ曾根海区の件が審議された。
自衛監視の実施には監視委員会(勝本)がその運営を担当した。運営の状態を知るために漁協の事業経過報告書、事業計画書、監査報告書の中から関連事項をひろってみた。
昭和四四年監査報告
自衛監視の態勢強化においては、勝本周辺の沖合漁場における密漁船の侵犯防止策として監視委員会を組織しかつ自営による監視船を配置し密漁船の取締りに当りつつある。
その経費は町当局の補助金以外は組合員において負担している現状である。密漁船の取締りは国家機関の業務であり、関係当局に取締り強化方を機会ある毎に陳情するとともに自衛監視は引続き強行の要がある。
昭和四四年業務報告、漁場を確保するために漁場監視委員会を組織し旋網、沖建網、ごち網等の密漁防止のため、七里ヶ曾根を旋網操業禁止区域設定の運動等をした。
昭和四七年業務報告、漁場の保持については漁場監視委員会を組織し、旋網、沖建網、ごち網等の密漁防止に努め自衛監視の経費助成を県へ要請した。
昭和四八年監査報告、当組合においては数年来監視委員会を組織し自衛による監視船を配備し取締りに努めるとともに、取締り当局とも連絡をとり常時監視に当りつつあるが、密漁船は依然その跡をたたず、国県並びに取締り当局へ取締りを強く要望するとともに引続き実施する必要がある。なお当期間内の経費の収支状況は次の通りである。
組合員賦課金 二、四〇七、〇〇〇円
県助成金 三七〇、〇〇〇円
飼付より 九〇〇、〇〇〇円
組合助成金 四四三、〇〇〇円
合計四一二万円 組合員二五〇円(毎月一人当り)
昭和五〇年業務報告、密漁船取締りのため平畑金毘羅丸を自衛監視船として雇用し、年間昼夜出動し勝本地先の漁場監視に務めた。
昭和五〇年監査報告、当組合においては漁場監視委員会を組織し、経費はおおむね組合員並びに組合の負担で監視船一隻を雇船し、常時密漁船の侵犯防止に日夜従事し相当の効果をあげつつある。しかし最近は、以西底曳船と疑われるもの、韓国の底曳船その他沖建網等の侵犯ははなはだしく、むしろ悪質化する傾向にある。この際国県の取締り船の配置を要請し取締りの強化を依頼するとともに、組合の自衛監視も続行されるよう要望する。当期間における監視経費は次の通りとなっている。次年度における経費の捻出については更に工夫検討の上善処せられたく要望するところである。
1収入の部
(イ)賦課金 五、八四五、五五〇円
(ロ)町助成金 四五〇、〇〇〇円
(ハ)県助成金 一六〇、〇〇〇円
計 六、四五五、五五〇円
2支出の部
(イ)雇船料 三、七四〇、〇〇〇円
(ロ)人件費 六四〇、〇〇〇円
(ハ)油代 二九六、五四〇円
(ニ)その他 一、〇六七、九九四円
計 五、七四四、五三四円
昭和五一年業務報告、密漁船取締りのため福吉丸を自衛監視船として雇用し、年間昼夜出動し勝本地先の漁場監視に務めた。
昭和五二年監査報告、自衛監視について、本件は毎年度、組合員総意の決するところに依って継続されており監視委員会を以って運営されている。五二年度は総代会の承認を得て、勝漁丸を雇用し、運用されていることは周知の通りであり、当期間内における運営収支についてこれを照査の結果違算なくここに内容を報告する。
昭和五三年業務報告、密漁船取締りのため勝漁丸を自衛監視船として昼夜出動をなし、勝本地先全域の漁場監視に務めた。
自衛監視を続けるについては毎年総会及び総代会の決議を得ている。組合員一人当りの負担金も当年では月三〇〇円(五五年度四〇〇円)となり、年間では、三六〇〇円にものぼっているわけである。それでもやめるわけにいかないその間の事情は、いかに七里ヶ曾根漁場が勝本漁民のために必要な地位を占めているかを物語っているといえよう。
監視船としては、芦辺の鮮魚船や勝本の漁船を雇船していたが、現在では勝漁丸が専任の監視船として監視を続けている。勝漁丸以前の場合、春の捲落期間中は捲落船が七里ヶ曾根に常時操業中だった関係で、捲落操業船に監視を委託していた。昭和五二年四月から五三年三月の監視経費一覧表の支出欄に、豊坂理事外監視料一二隻分一二万円とあるのがこれである。
勝本の漁民は海のある限り、漁業の続くかぎり、七里ヶ曾根漁場の監視を永久に続けていかねばならないのかも知れない。

 




 

【壱岐の象徴・猿岩】

猿 岩

 

【全国の月讀神社、月讀宮の元宮】 

月 讀 神 社